聖徳会

第24回 R・ニーバーの祈り 中編 ~開き直りのススメ~

それでも宿命に挑むなら…。

さて『運と向き合う姿勢』が定まったことで、一応の精神的居場所を見つけることができたので、イライラがおさまった私は、その後、宿命対策の発展型となる新たな技を開発した。 それは、開き直り方にもう一工夫を加えた、"時の助けを借りる"という技だ。

この技を使うと、その時点では、一見"問題の先送り"にもみえるのだが、これは、ただ先送りにして問題から目を逸らす逃げの姿勢ではない。

私は、(結果として)"時の経過"が、ものごとの解決に対して効果的な"作用"を及ぼしたケースが多いという事実に着眼したのだ。 要は、"今は出来ないことでも、時を経れば、後には出来る(ようになる)ことも多々ある"ということに気が付いたのだ。

"時の果実"は結構美味しい。程よく熟せば尚更美味しい。だから、時の(果実が)熟すのを待ってから収穫することを考える…ということなのだ。 この技の使い方を簡単に説明すると、

①問題自体は継続審議事項にして、(早急に)結果を求める事を一時停止する。
②そして、まずは、今の段階で出来る事に力を注ぐ。
③そして機が熟すのを待つ。

という手順になるが、この技は、以下の効能、及び使用上の注意を良く読んでから使用してほしい。

*効能*
この技は"どうにもできないこと"を"時の作用"を使って、"どうにか出来るかもしれない事"に加工できるので、少なくとも、"希望を失わない"という前向きの姿勢がキープできる。熟達すれば"諦め"を"希望"にかえてしまう事さえもできる…。

*適応症*
この技は、宿命のジャンルの中でも特に『現在の社会通念上は不可能と思われること』に対して効果的だと思える。

使用上の難点
しかし、この技を使えば、"宿命"という難物を向こうに回した持久戦になることは明白だ。従って力及ばず敗退する可能性も十分有り得る。だから、この技を使う時には、"ダメもと"の覚悟が不可欠である。この技は、(分が悪いのを十分承知の上で)"敢えて挑む戦い"において有効だが、相当な覚悟を持った確信犯でないと使いこなせないのが難点と言える。

*副作用の有無*
また、この技には、ある目的のための努力を続けていたことで、別の道が開けてしまい、当初の目的が陳腐化してしまうという副作用が生じる場合がある。

*副作用への対応*
そうなった際には、『なぜ宿命に挑んだのか』を原点に戻って考えよう。

最終的な目的を遂げるために、宿命に挑んだのであって、宿命と戦うこと自体は"目的"ではないはずだ。だから、副作用によって別の選択肢、別の方向性が生じたら、いたずらに当初の目的に固執せず、思い切って心機一転を計って軌道修正するのも一計である。

"挑む"ためには勇気が必要だが、"退く"ことにも同じくらい大きな勇気が必要だ。人生の幸福という最終的な目的に到達するためには、より有利な道を選べる柔軟性も大切な武器なのだ。ネバーギブアップの"強靭さ"と臨機応変の"柔軟性"は、二律背反のようだが共存可能の要素だ。その両者を武器にすれば宿命とだって戦えるはずだ。

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