聖徳会

第17回 生きたお金の使い方 前編

森羅万象をうごかす絶対ルールを天地自然の理と呼ぶ。 東洋運命学の根本原理の一翼を担う思想に"五行説"がある。五行説では、森羅万象は、木・火・土・金・水という5種類のエレメントよって構成され、それぞれは一定のルールに基づいて、"相生"と"相尅"という、相互に作用を及ぼし合う相関関係を有すると説かれている。

五行の相生の関係は、水が木を生じ、木は火を生じ、火は土を、土は金を、そして金は水を生じるという約束によって、相生による循環のシステムを構築し、また、相尅の関係では、水は火を、火は金を、金は木を、木は土を、土は水を尅する(殺す、傷つける)という約束によって、いわば五すくみの状態で相互をコントロールするシステムが成立している。

五行の相生、相尅の論理は、この世のすべては、他の何かから生まれ、他の何かを生み、他の何かに尅され、他の何かを尅す存在であることを示している。例えば、土は、火から生まれ、金を生み、木に尅され、水を尅す存在ということになる。

五行が正しくバランスしていれば、大自然の循環システムは正常に機能し、その営みは永遠に継続する。しかし、五行のバランスが崩れ、その循環システムに狂いが生じてくると、世界は滅亡への道を辿ることになる。

私は五行の相尅の図式の中で、木の位置に自然、火の位置に文明、土の位置に人間の生活、金の位置に金銭、水に位置には生命の源である水をそれぞれ代入してみた。そしてその図式の中から火土金の部分だけをクローズアップして見ると、火(文明)が土(人間の生活)を、土(人間の生活)が金(お金)を生み出していく様が読み取れる。 さらに、火の文明の部分を、便利さと物の豊かさをひたすら追い求める現代の物質文明に置き換えてみると、それが人間の生活を飽くなき経済活動に駆り立て、その結果が金という欲望の結晶を生み出していることがよく解る。

今、地球上では文明の進歩に伴って増え過ぎた人間が、狂ったように金を求め、金を生もうと躍起になっている。人間が夢中になって生み出した金は何を生んでいるだろうか。本来ならばそれは、水を生み出さねばならない。しかし、金はただ消費され蓄積され、さらなる金を生むために経済活動の中に再投入されていく…。五行の循環のために有益な何も生み出してはいない。循環はここで途絶えてしまっているのだ。

  目次へ戻る